誰かが

引用。メモ。『モロイ』第II部冒頭と終結部。日本語訳から引用。



「 真夜中だ。雨が窓ガラスを打っている。私は落ち着いている。すべてが眠っている。それでも私は立ち上がって、机へ向かう。眠くはない。ランプがしっかりした、だがやわらかい光で私を照らす。芯を調節した。これで夜明けまでもつだろう。梟の鳴き声が聞こえる。



近況はよくなかった、しかし全部が全部でもなかった。なかにはよいものもあった。よい天気の毎日だった。冬は例年になくきびしかった、みんながそう言っていた。したがって、このすばらしい夏も私たちの当然の権利だった。私たちにその権利があったかどうかは知らない。




私の鳥たちは殺されてはいなかった。野鳥だったから。しかし、かなりなついていた。私にはそれぞれがわかり、鳥たちも私たちがわかるようだった。しかしわかったものではない。いなくなった鳥も、新しい鳥もあった。私は鳥たちの言葉をよりよく理解しようと努めていた。私の言葉の助けを借りずに。一年でいちばん長く、いちばん元気のよい日々だった。私は庭で生活していた。


私にあれこれ言う、ある声のことはもう話した。


そういうわけで、はじめは、なにを望んでいるのかわからなかった。しかし、とうとう、その言葉を理解するようになった。私はそれを理解した、理解している、まちがっているかもしれないが。しかし、問題はそこにはない。報告をしろといったのはその声だ。それは私が今ではより自由だということだろうか。わからない。いろいろと習うことだろう。そこで私は家へはいって、書いた、真夜中だ。雨が窓ガラスを打っている。真夜中ではなかった。雨は降っていなかった。  」