なにか出てきた?

先日書いたことに付け足す必要があるらしい。
というのも、まったくどうでもいいといえばどうでもいいが、実はウォークマンに「河岸・・・」を入れて聴いていたら、それはそれで、まったく面白い感じだったからだ。
そこでは、文章の意味は断片的にしかわからないし、当然、全体の流れなどはわからない。代わりに、低い男性の声がけっこう耳に馴染みやすく、そこにどのように構成されたか俄にはわからないような、実に様々な音がつけ加えられている、というか、音と声がほとんど同じようなものとして耳に入ってくる。
そうすると、実は聴くたびに大きく印象が変わったりするのだ。これは、かなり面白い。一人でいるといつもブツブツと頭のなかで呟いてしまう人間にとっては、これはストレスの軽減にもなる(癒しと言うよりも、独り言を代理でしてもらっているような、肩代わりの感触)。そんな楽しみ方。

そのあと、大友良英の「幽閉者」のサントラを買った。実は昨日、はじめてカヒミ・カリィの「NUNKI」も聴いた。驚くべき生産量。そしてまったく同じ人間が関わったものとは思えない振れ幅。素人ながら、さしあたりパッと聴いて分かるのはリズムが明確にはないことくらいか。
ただし、サントラは映画を見ていないのでその関係はわからないが(というか、この音楽が映画で鳴るのか?という驚きが物凄いある)、良い作品なのかどうか、感想文としてもまったく判別しかねる。個人的には歴史にも興味があるし、政治にも、イデオロギーにもそこそこ興味がある。そのせいかもしれない。
そのせいかもしれないが、なんというか、何かが噴き出してしまったような印象を受ける。それが噴き出してしまったことを、即座には肯定しがたいほどの作品であるという感想を抱く。内容がどうこうというわけでもないし、かなり、なんというか、撃たれた、というような感じもある。曲も素晴らしい。CDでしか聴いたことがないがちょっとグラウンド・ゼロに近いのかなとか勝手に思ったりする。しかも、かなりの本気の音楽でありそうだ。聴いたら引き返せない人も出るんじゃないかという気さえする。それがどこまで新しい(最新の、というそのままの意味で)ものなのか、何か伝統を復古したものなのか、知識不足には俄に判断が付かないが、物凄い轟音だし、ノイズもあるし、寂しいアコギもあるし、でもかなり複雑に処理されているようにおもえる。呑み込まれる、鷲づかみにされる感じもあり、それはそれこそドラムがない、リズムに乗ってアッパーになるのとは別のものだからかとかも思う。
もし本気として、これは本当に凄い、癒しなんてものじゃないんだやはり、やるところまでやるんだという改めての姿勢に驚くとともに、何か蓋が開いて出てきたという感じがある。それは映画と関係があることなのだろうとも思うが、若造がいうことではないのだろうが、それはエモーショナルな政治と人生のようなものなのかもしれない。上手くは言えないが、これを避けるか避けないか(勿論そもそも気づかないし無関心、というのは別として)という点での、モロな何かが表現されようとしているように思えた。実際は楽しく製作された作品だけなのかもしれないからその辺は良く知らない。ただその避けるか避けないかというのは、たぶん映画監督とともに、この30年ちかく(つまり僕は知らないのだが)この国から隠されてきたものと関係しているのかなと思い、少なくともこれまで読んだどの60年代ものよりもヤバい気配を感じ、なんかダラダラ書いてしまった。
・・・と書いてから、でもやっぱりこれは刺激がある。こういうのこそ、久しぶりかもしれない。もうちょっと聴いてみよう。