3月12日午後4時

 誰かに心配されているとはあまり思わないけれど、とりあえず僕自身は無事です。現在は12日の午後4時、作業室のある池袋にいて、資料などの状況をチェック中。池袋は人が少なく、マルイが臨時閉店、いくつかの食事処は食料調達ができないということで閉まっている。交通については、基本的に問題はない。


 誰に読まれているのか知らないけれど、すこし歳をとったのかもしれないと思うのは、いまから16年前に、テレビで同じような光景を見たとき、大変だと思ったけれど、実はリアリティをほとんど感じなかった。
 それから16年たって、家や車や作業具があてどもなく流れているのを見ていると、勝手な言い分かもしれないけれど、その持ち主の悔しさのようなものを感じる。積み上げて来たものが、あっけなく、どうにかなってしまったということについての感情のようなもの。
 でも、僕自身はそういうことを感じるような財産はないから、ただの余計な移入にすぎないのかもしれない。
 


 ただ、わかるのは、いま本当に大変な人は、たぶんこの文章を読んだりすることのできない環境にいる人だということだ。
 いくらこの文章が日本語で書かれていようと、電気もガスもないということは、おそらく携帯だって充電を節約しているだろうから、つまり、この文章はその人には届かないだろう。


 だから、誰に読まれているのか、読まれていたのかは知らないけれど、もしこれまでに読んでいた人で、いま読めない環境にいる人がいたら、あなたがこれを読むのは、今日から一週間や二週間たってからかもしれないけれど。

 どうか、がんばってほしい。


 遠くにいて何もできないかもしれないけれど、これに何の意味があるのか分からないけれど、ただとにかくそれだけを願っています。


                     3月12日